持ち株会には加入すべき?従業員持株会のメリット・デメリット
持株会とはその名の通り会社の株を持つということです。定期的に自社の株式を購入する、という制度になります。
入社してしばらくすると、持ち株会をやらないか?という話が出てくると思いますが、入るかどうかはしっかり吟味すべきです。
持株会の仕組みについて簡単に解説
持株会は民法に基づいて設立される組合で、株式は持株会を通して購入されます。
加入者からそれぞれ資金を預かり、それを一括して証券会社を通して株式を購入。出した金額に応じて、加入者に持ち株が配分されるという流れです。
持株会のメリット
持株会のメリットについて。
少額で始めることができる
通常の株式投資の場合数万円から数十万円のまとまったお金が必要になりますが、持株会の場合は数千円から始めることができます。
給与天引きなので自然と貯まる
持株会は給与や賞与から決まった額(自分で設定)を天引きで投資していくものなので、自然と株数をためていくことができます。
強制貯蓄みたいなもので、お金が入ってくると丸々使ってします、という人にとっては強い味方になると言えるでしょう。
また、株式は日々値動きがあるので気になってしまうところですが、持株会でこつこつ投資している場合そこまで株価が気にならない、というのもある意味でメリットと言えるかもしれません。
自動購入ですから、自分で買うタイミングを見る、といった必要も無いですから忙しくても利用しやすいです。
奨励金がもらえることがある
持株会によって、奨励金が出ることもあります。
日本取引所グループの調査によると、各社の奨励金は下記の通りとなっているようです。
買付手数料や事務委託手数料に対する補助を除き、拠出金1,000円につき従業員持株会の制度実施会社から加入者に対し支給される金額
奨励金額 | 0 | 〜40 | 40-60 | 60-80 | 80-100 | 100-150 | 150−200 | 200-250 | 250〜 |
会社数 | 108 | 165 | 1,290 | 204 | 96 | 1,067 | 73 | 114 | 27 |
比率 | 3.4 | 5.2 | 41 | 6.5 | 3.1 | 33.9 | 2.3 | 3.6 | 0.9 |
※ 2016年のデータ
最も多いのは40-60、拠出額に対して4-6%です。次いで多いのが、100-150、拠出額に対して10-15%です。
奨励金は別途現金でということではなく株式の購入に回りますが、奨励金が出ている分だけ有利に運用できるとも言えます。
たとえば10%奨励金が出るのであれば、毎月1万円の拠出で1万1,000円分の株式が購入でき、年間で1万2,000円分多く購入できたことになりますからね。
自社への関心が高まる
自社の株式を保有することで、少なからず自社に対する関心が高まります。
持株会のデメリット
持株会のデメリットについて。
会社への依存度が強くなる
基本的に、どんな大企業であれ、自分が働き、給料をもらうところと、資産の預け先が同一であると、不確実性が増大してしまいます。
もし会社が経営不安に陥れば、リストラや減給などにより、定期的収入が脅かされることになりますよね。
そうなると当然、持ち株会に入っている場合は株価も下落して資産も減少し、泣きっ面にハチと言った状態になってしまう。
そのため、あまり多くを会社に依存するのは避けたほうが無難と言えます。つまり、お金が入ってくる場所であったりお金(資産)の預け先を分散すべきです。
売却手続きが面倒(すぐ現金化できない)
持株会の場合、通常の株式投資のようにすぐに売却する、ということはできません。
売却するためには、持株会の指定する証券会社の口座に移管して名義変更し、その上で売却する必要があります。
なので、その証券会社の口座を開設していない場合は、一度口座を開設してから手続きを進めなければいけません。
それが終わっていよいよ移管ですが、すぐ個人口座に移管されるわけではなく、数週間は必要になります。
また、移管手続きが淡々と事務処理されれば良いですが、場合によっては上司に確認したりする必要もあり、心理的な負担がある点も要注意です。
その他に面倒だと感じる点としては、インサイダー取引にならないように配慮しなければいけないというところですね。インサイダー取引とは、ざっくりいうと未公開の情報を使って利益を出すことを禁止しているものです。
積み立ての場合は下記の通りインサイダー取引の対象にはなりませんが、売却の場合は対象となります。
一定の計画に従い毎月行う定時定額の買付け(各役員・従業員の1回あたりの拠出額が100万円未満)はインサイダー取引規制の適用除外です。したがって、このような自社の株式の買付けであれば、未公表の重要事実を知っていても可能であり、インサイダー取引規制違反に問われることはありません。
自社株の売買の場合、下記の点に留意する必要があります。
未公表の重要事実を知っているかを確認する。
※知っている場合は、当該重要事実の公表後に売買を行う。
知っている情報が未公表の重要事実か判断が難しい場合は、自社の株式の売買を管理する部署などに確認・照会する。
自社の株式の売買に関する社内ルールがある場合は、必ず社内ルールに従い、必要であれば所定の手続きをとってから売買を行う。
持株会から個人口座に移行して後は勝手に売って良いということではなく、社内規定をしっかりと確認した上で売却する必要があります。
株主優待をもらえない
単元株分貯まって個人口座に移せば別ですが、持株会で保有している場合、その会社が株主優待制度を実施していたとしても優待を受け取ることはできません。
その株式の名義があなたのものではないからです。なので、優待を受け取りたい場合は単元分まで待ち、個人口座に移す必要があります。
結局持ち株会は加入すべきか
実際に働いているわけですから会社の状態もある程度分かるでしょう。なので、将来性があると感じたら無理のない範囲で積み立てておくのもいい戦略だと言えます。
特に、すでに上場しているわけではなく、未上場で近いうちに上場する可能性があるのなら、資産が一気に増える可能性もあるので面白いかもしれません。
ただし繰り返しになりますが、絶対もうかるといった保証はないので、自分でしっかり検討して決断しましょう。
持株会に関する疑問を解決
持株会についてその仕組みとメリット・デメリットについて解説しましたが、上記の他にも気になるポイントがあるのでまとめておきます。
持株会の税金は普通にかかります
持株会も通常の株式と同様、税金がかかってきます。特に控除などは無いので、そこは勘違いしないようにしましょう。
配当金は積み立てに回ります
配当がでているところは当然配当を受け取ることができますが、個人口座に移していない場合は現金ではなく、その配当分の株式が積み立てられます。
従業員持株会でNISAを利用することはできません
少額非課税制度のNISAが始まっておりますが、とあるアンケート結果によると、認知度はまだ10%強と、制度の内容はあまり知られていないようです。
確かアンケートについては、投資家を対象としたものだったはずなので世間一般で考えると、名前は聞いたことあるけど、といったレベルの人が大勢で割合はもっと下がるのかもしれません。
さて本題ですが、今回は従業員持ち株会のNISA利用について、です。
持ち株会でNISAを使うのは無理
従業員持ち株会をNISAで利用できるのか簡単に調べてみると、「従業員持株会制度により取得した上場株式などは非課税口座に受け入れることはできません」といった文言が見つかりました。
ここで注目すべきは、受け入れることはできませんとの文言。そもそもNISAでは持ち株の移管はできず、新規で購入しないといけないため、現在の保有分は移すことはできません。
新規での投資でも無理な模様
次に、持株会の新規投資についてですが、正直に言うとはっきりしたことは分かりませんでした。ただ、おそらく従業員持ち株会は非課税枠の利用は無理なんじゃないかなとは思います。
持ち株会の場合は個人が買付というわけではなく、給与から天引きされ、利用者のお金を一括して自社株を買付、拠出した額に応じて株式を分配という流れですから難しいでしょう。
もしかしたらできるのかもしれませんが、詳しくは所属企業の担当部署に確認、ということになりそうですね。
わざわざNISA枠で持ち株会をやる必要は無い
そもそも論で恐縮ですが、従業員持ち株会の制度をNISAで利用するというのは、検討する必要はなさそうです。
まず初めに書いておきたいこととしては、自分が勤めている会社の株を持つということはリスクを一つに集中させる行為であり、あまりおすすめはできない投資行動です。
ただ、補助(奨励金)などがある場合は検討することも必要ではありますが。で、もし自社株を買いたいのであれば、単純に市場で購入してくればいいようにも思います。
あえてNISAを使うとなると、いろいろ問い合わせてみたりとかも必要になりそうで、めんどくさそうですから(汗)